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HOME > お知らせ 2017年度 > シンポジウム『マリタイム・ガバナンスへの日本の貢献を考える』開催報告

お知らせ

シンポジウム『マリタイム・ガバナンスへの日本の貢献を考える』を開催しました

Last Update 2018.03.30


3月19日、深江キャンパスにて研究科附属国際海事研究センターと海事科学教育開発センター主催で表記のシンポジウムを開催いたしました。

船舶の活動舞台は世界の海であることから、海事分野のルールは国際ルールになります。国連の専門機関である国際海事機関(IMO)を中心に各国が連携してルールが決定されます。

シンポジウムでは、世界の海事分野の調整・コントロール(統治)『マリタイム・ガバナンス』への日本の貢献を担う今後の海事研究について展望を伺い、討論しました。学内外の研究者・海事関係者40名の参加がありました。


西尾茂・国際海事研究センター長から、国際海事研究センターと海事科学教育開発センターの改組の経緯と目的の紹介とともに、海事科学研究科・学部が国際的な海事ガバナンスへの積極的な関与を模索する中にあって、各方面からの情報・ご意見のご提供・提示をその方向性の検討に資したいと開会挨拶がありました。


第一部

第一部:国際海事社会の最新動向〜欧州域における牽引力の存在〜

「欧州域のマリタイム・ガバナンス」
・長谷部  正道・公益社団法人日本海難防止研究会  欧州代表国際海事機関  国際海事法規研究所  理事/神戸大学客員教授

ロンドンでの「LRO News」の配信活動の経緯とともに、継続した情報収集活動の中から現在の海事関連のいくつかのトピックについて紹介をいただきました。これらはIMOの所轄案件として、GHG規制の現状、自律航行船に向けた各国の取り組み、また所轄外の案件として、生物多様性、プラスチックごみの課題、さらには海洋をめぐる地政学的な問題として、中国の海洋政策、北極海に対する各国の思惑について、深い洞察でもってキャッチアップされているからこその緊迫感を伴った解説でした。併せて本学部・研究科の輩出する人材について、幅広く海洋各分野についての知識と視点を持ち、かつ、価値観の異なった人々の中にあっても自説を表明できる力を持つことを期待する旨のコメントをいただきました。

第二部


第二部:アジア域連携の必要性

「アジア域におけるマリタイム・ガバナンススキームの構築」
・羽原敬二・関西大学政策創造学部教授/神戸大学客員教授

船腹量などの具体的なデータの提示しつつ 、我が国において船員育成を継続する重要性を再確認されました。その上で船員の育成スキームについて、国土交通省の所轄に一括する提案がありました。さらには、アジア域での海事関連の協議(ガバナンス)機能の必要性とともに、具体的に運営する主体についての提案もありました。これらは、特に現在フィリピンが国際的な海運界へ人的資源を供給している事実について、そのシェアの占める重要性と質的な維持・向上の必要性について、我が国がこれまでの船員育成のノウハウをもって、かつ、海運先進国として積極的にリードする「責任」がある、との考え方に立っています。このようなアジア域におけるガバナンス・スキームにおいて、我が国が中核的な役割を担うことにより、国際的なプレゼンスを示すことにつながる、とするものです。


第三部

第三部:我が国の国際海事社会でのイニシアティブ

「IMO船員分野における我が国の貢献について」
・岡村知則・一般財団法人海技振興センター技術・研究部主任研究員

IMOの組織構成とともに条約策定の流れについての概説と、国際的な議論の場に臨むにあたっての国内での検討の仕組みについての紹介がありました。特に、IMO(とこれにつながる国内)での議論の場において、我が国が人的に貢献している事実はあるものの、船員に関わる議論については「手薄感」が否めない、つまり船員問題の専門家が少ない、との指摘をされました。本研究科・学部へは、海技者としての力を備えている、「現場感覚」を基盤として、このような国際的な議論の場において活躍できる人材の輩出を期待する、とされました。一方で、現行の制度における船員の疲労の問題、その他今後の自律航行船に関する船員の立ち位置など、重要な船員に関わる研究課題の存在に対し、研究機関としての本研究科に期待する旨の発言をいただきました。


総括

括:我が国における真の産学官の連携とは「神戸大学の果たす役割」
内田・神戸大学海事科学部長・海事科学研究科長

学長の基本方針「武田ビジョン」に伴う機能強化の方向性を主としながら、現在の研究科における課題について紹介されました。本日講演いただいた内容は、いみじくも、本研究科における次のステージにおいて、何を基軸とするべきか、本質として見据えるべき課題は何かを示唆するものであるとの総括がされました。


シンポジウムの様子


海事科学教育開発センター・廣野康平より、会場からコメントや政策に関する最新の情報提供をいただきながら、今回のテーマについて、今後も当センターとして検討を継続していくにあたり、一層の諸氏のご協力を乞いつつ、閉会しました。