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キャンパスライフ

教員のエッセイ

ミネソタの夏

ミネソタの夏1

 ミネソタもやっぱり夏は暑かった、と書こうと思っていたのだが、今年は例外的に寒いようだ。ミネソタも夏になったら寒くなる、と脅かされていて、7月に一日だけ30℃を越える暑い日があったが、夏が来たと思ったのはその週だけで、その後曇りの日が続き気温が上がらないなと思っているうちに8月になって急に冷えこんできた。記録によると8月の最低気温は2℃だそうで、昼間でも15℃くらいの日があって、とても半袖の服では外を歩けないくらい寒かった。もっとも私は寒がりな方で、すでに長袖のジャケットを着ていたりするのだが、今日は暖かいので半袖シャツで歩いている人もけっこういる。


 こちらの人に言わせると今年は記録的に寒いという話で、このまま冬になるわけではなく、しばらく穏やかな気候が続いてから冬に入るのだという。日本は記録的な猛暑が続いていたようなので、その暑さを避けることができたのは幸いかもしれない。


ミネソタの夏2

 ともあれミネソタと言えば湖、ということで知り合いに誘ってもらってヨットに乗ってきた。6人乗りくらいの小さなヨットであるが、実を言えばヨットに乗るのは初めてである。湖ということもあって波はほとんどなく、ヨットを走らせるにはいい環境である。残念ながらその日は、風があったりなかったりで、快調に走る時もあれば、風がなくてゆっくりということもあったが、そういう時はおしゃべりしたりで楽しいときをすごすことができた。湖では水上スキーを楽しんでいる人もいた。ヨットの上からは湖岸の住宅を眺めることができたが、それぞれの家がボートやヨットを持っており、優雅なたたずまいは非常に余裕を感じさせるものだった。もっとも、聞いた話によれば湖岸の住宅はやはり価格も高いそうで、ブロック1つ離れるごとに値段が下がっていくそうである。


 また、お世話になっている教授の家でBBQをすることになってお邪魔させてもらった時は、その家の広さにびっくりしたこともあった。広さ的には日本の旧家のような感じだが、もちろんまだ新しく造りも立派でちょっとしたお屋敷のようであった。なにより驚いたのは、地下にプレイルームがあって、ビリヤード台とエアホッケー台などが並べて置いてあったことである。もちろん大学の先生でも人によってまちまちという話である。


ミネソタの夏3

 アメリカに来て感じるのは、生活費を低く抑えようとすればかなり安くすることができる一方、ちょっと贅沢をすればするほどお金がかかるという現実である。日本の場合はどこのスーパーにいっても野菜などはほとんど同じような値段だが、こちらではきれいなスーパーのきれいな野菜は高いが、そうでないスーパーでは形の整っていない野菜が安く売っている。また、ハンバーガーなどのファストフードは比較的安いが、レストランなどはチップもあるのですぐに値段が高くなる。その意味では、所得の格差は厳然として存在し、それぞれは所得に応じたライフスタイルを選ばざるを得ないのだろう。ミネアポリスではあまり見ないが、シカゴのダウンタウンでは通行人に小銭をせびる人を頻繁にみかけた。


 さて、ミネアポリスの今年一番の出来事といえば、ライトレール(Light Rail)の開通だろう。アメリカの大きな都市にはたいていメトロと呼ばれる近距離鉄道が走っているのだが、これまでミネアポリスにはこの近距離鉄道がなかった(シカゴとシアトルを結ぶ長距離鉄道「アムトラック」はある)。こちらではフリーウェイは無料の高速道路であり、朝晩のラッシュ時は一部だが非常に混雑する。その混雑緩和が主な目的であるが、ツインシティに住む人の中には空港とダウンタウンを結ぶ鉄道があることが一人前の大都市のように思っている人もいた。残念ながらまだ全路線開通というわけではなく、ダウンタウンとFort Snelling (スネリング砦)の間だけであり、Fort Snellingから空港、そしてモール・オブ・アメリカまでが開通するのは12月の予定になっている。これまでメトロがなかったせいかどうかわからないが、開通初日と二日目は運賃無料ということで、かなりの人でごった返していて迷子も出てきたり、なかなかスムーズに発車できないこともあった。


ミネソタの夏4

 料金システムはロサンゼルスのメトロと同じで改札などはなく、各自で切符を買って勝手に乗り込むという仕組みになっている。時々、検札に回って有効な切符をもっていなければ$100の罰金ということで各駅には全く駅員などがおらず、この合理性というか割り切りかたはすごいと思う。また、市バスと運営が同じなのでバスから乗り継ぎする場合には、バスが1回で150分有効なので、その間であれば新たに切符を買う必要がない。急行バスは50セントほど高いのだが、ライトレールは普通のバス運賃と同じく$1.25(140円)ほどである(ラッシュ時は$1.75(197円))。


 ちなみにミネソタ大学の学生であれば、U-passというのが購入でき、1セメスター分が$50で購入でき、急行バスなど乗り放題である。その他、コンサートのイベントとタイアップして、そのイベントのチケットを持っていれば運賃無料など、日本ではなかなかないようなサービスを提供している(もっともその一方で、信じられないくらい長いストライキもあったが)。また、ほとんどのバスは車椅子の昇降機があり利用頻度もかなり高い。さらに、バスもライトレールもバイクラック(自転車を置く場所)を備えていて、自転車をライトレールに持ち込むのも普通である。


 ツインシティ以外でよく観光客が行く場所としては、ドルース(Duluth)がある。ツインシティからは車でフリーウェイを使って2時間半から3時間くらいで、日帰りも可能である。ドルースはスペリオル湖に面した街で、この湖を介した輸送で栄えた街である。スペリオル湖は五大湖の1つであり、ドルースから見ると海のように見える(先には地平線しか見えない)。残念ながら、私が行った日は天気があまりよくなかったが、ドルースの街に入るフリーウェイは小高い丘になっており、そこから見える眺望はなかなかのものである。


 夏はFestivalもツインシティのあちこちで行われている。Art Festivalでは3つの会場でさまざまな美術品などが売られていたし、日米ミネソタ協会によるJapanese Lantern Lighting Festival(盆祭り)にも、多くのアメリカ人がやってきて賑わっていた。また、今週の木曜からは、Minnesota State Fairが始まる。これは最大のお祭りと言ってもよいものらしく、「State Fair」と書かれた専用の敷地が存在している。いろいろな食べ物やアトラクション、出店があるということで今から楽しみにしている。


ミネソタの夏5

 ミネアポリスのあるツインシティは、ニューヨークやシカゴなどの都会と比べると、よく手入れが行き届いていてきれいな街という印象がある。またちょっと郊外に出ると、青々とした芝生が広がっており雰囲気がとてもよい。気候的には北海道をもっと寒くした感じのようにも思う。残念ながら、いわゆる観光名所的なところやブランドショップみたいなものは多くないが、アメリカで住む場所としては、非常に住みやすい場所という気がした。今後機会があるかどうか分からないが、ぜひ再び訪れてみたいと思う。


(J・K)