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研究活動

最近の研究から

次世代のヒューマンインタフェースの開発

長松   隆   講師

Keywords: 視線計測、視線インタフェース、携帯端末、タッチパネル、触覚フィードバック

はじめに

ヒューマンインタフェースとは、人と機械あるいはコンピュータとの接続部のことである。キーボード、マウス、ゲーム機、ATMのタッチパネル、自動車のハンドルやペダル、船舶の舵輪や機関制御コンソール、航空機のコックピット、プラントの制御盤など、様々なものがヒューマンインタフェースである。

近年のヒューマンインタフェースの発展には目覚ましいものがある。タッチパネルや加速度センサを用いたゲーム機や携帯電話も当たり前になっている。最近では、何も持たずにジェスチャ入力を行ったり、何も掛けずに3次元立体映像が見えたりする装置なども普及し始めている。従来のコンピュータは、複雑な操作手順を覚えなければ使えなかったが、最近は直感的に使えるように進化してきている。本稿では、私の研究室で行っている最近の研究をいくつか紹介する。


視線インタフェース

私の研究室では、次世代のヒューマンインタフェースとなる技術として、視線計測技術の研究を行っている。視線は、人の興味、関心、意図などを反映するので、視線を計測し、それによりコンピュータなどを操作できれば、さらなる直感的なヒューマンインタフェースの実現が可能となる。視線を用いたヒューマンインタフェースのことを視線インタフェースと呼んでいる。

視線計測技術の使い易さの向上が、視線インタフェースの開発の際には重要となってくる。従来の視線計測装置は、利用前にユーザが既知の点を何点か注視するキャリブレーションが必要であるなど事前の準備が非常に煩わしく、主に実験室内での利用に限られていた。

私の研究室では、このような問題を解決するために、ステレオカメラと赤外線光源を利用し、1点を注視するだけで済むキャリブレーションにより視線計測を可能とする装置を開発している[1,2]。この装置では、目の位置と向きを3次元で計算しているので、原理的に頭部を自由に動かすことが可能である。

1点キャリブレーションのものより精度は劣るが、キャリブレーションのいらない(キャリブレーションフリーの)装置も開発している[3]。図1にプロトタイプシステムを示す。キャリブレーションフリーの装置では、ユーザが装置の前に来るだけで、何処を見ているかを計測できる。この技術を用いれば、例えば、ショーウィンドウなどで、ある商品に注目するだけで、その商品に関連する情報を表示させるというようなことも可能である。他には、博物館、美術館などの説明用にも利用することも可能である。マーケティング調査、広告、インタラクティブアートなどにも利用可能であろう。



図1 キャリブレーションフリーの視線計測装置
(左のディスプレイの下の4つのカメラを使って眼球を撮影し、左のディスプレイ上の注視点を推定している)

また、開発した視線計測技術を携帯端末に適用すれば、携帯端末利用時の視線の計測も可能である[4]。図2は、携帯端末での視線を計測する装置のプロトタイプであるが、視線でカーソルを操作することが可能である。スマートフォンなどを片手で使う場合、端末を支持しながら端末を操作しなければならないが、視線でポインティングできれば、指の近くをタッチするだけで、簡単に選択できるようになる。同時に、Midas touch problem (視線インタフェースにおいて、見たものが片っ端から選択されてしまう問題)を効果的に回避できる。


図2 携帯端末向けの視線インタフェース

触覚フィードバックのあるタッチパネル

視線インタフェース以外に、最近はタッチパネルの研究も行っている。タッチパネルは、ATM、駅の自動券売機などで広く利用されているが、一般に、押す面が平らであるために、(1)正しく操作できた実感がない、(2)意図とは異なる場所を押してしまうなどの問題がある。そこで、タッチパネルによる入力ミスを防ぎ、かつ、自然な押下感を実現するために、パネルを押し込める機構を設けたタッチパネルを開発している[5]。このタッチパネルは、押せる場所と押せない場所とをユーザに知覚させるために、タッチした場所に応じて、パネルの固定具合を変化させているところに特長がある(図3)。


図3 触覚フィードバックのあるタッチパネル

最近の原子力発電所は、タッチパネルによるオペレーションが主流になってきているなど、タッチパネルの利用は至るところに広がっている。今後、確実に正しく操作できるタッチパネルは、様々な分野で応用されるであろう。


今後の展開

ここで述べた技術は、もちろん障害者や高齢者などにとっても便利なものであるが、一般の人々も利用するという視点で開発していくことが重要であると考えている。一般の人々が利用しない技術では、装置の価格が下がらず、必要とする人が利用できなくなってしまうからである。

今後、視線インタフェースの研究は、より大型のもの(ディスプレイから、テーブル、壁、部屋へ)、より小型のものへと2方向に進めていく予定である。さらに、視線インタフェースとタッチパネルを組み合わせた研究も進めていくつもりである。

最新情報については研究室のホームページをご覧下さい
   (http://www2.kobe-u.ac.jp/~nagamatu/)。


関連する最近の研究論文
[1] Gaze Estimation Method based on an Aspherical Model of the Cornea: Surface of Revolution about the Optical Axis of the Eye (非球面角膜モデルに基づく視線推定手法:眼球の光軸中心回転体), Proceedings of Eye Tracking Research & Applications Symposium 2010 (ETRA 2010), pp.255-258, 2010
[2] リスティングの法則に基づく眼球の視軸と光軸の回転モデルとそれを利用した視線推定手法と評価手法, 電子情報通信学会論文誌, Vol.J93-D, No.4, pp.511-521, 2010
[3] Calibration-free Gaze Tracking Using Binocular 3D Eye Model (両眼の3次元モデルを用いたキャリブレーションフリー視線計測), Proceedings of the 27th international conference extended abstracts on Human factors in computing systems (CHI 2009), pp. 3613-3618, 2009
[4] MobiGaze: Development of a Gaze Interface for Handheld Mobile Devices (MobiGaze: 携帯端末のための視線インタフェースの開発). Proceedings of the 28th international conference extended abstracts on Human factors in computing systems (CHI 2010) pp.3349-3354, 2010
[5] パネルの遊びから押せる場所が分かるタッチディスプレイの開発, 情報処理学会 第73回全国大会予稿集, 4-315 - 4-316, (2011) [学生奨励賞受賞]

(2011.03.15)