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研究活動

最近の研究から

省エネに貢献する高周波スイッチングモード半導体電力変換装置

三島  智和   准教授

Keywords: 電力変換、パワーエレクトロニクス、電力用半導体、高周波、高効率、ソフトスイッチング、輸送機器、産業用機器、新エネルギー発電

まえがき

地球温暖化を進行させる主要因である二酸化炭素(CO2)排出量の削減は、発展途上国も含め今や世界規模で取り組む環境問題となっています。この中で、地球全体で年間に消費するエネルギー量の約14%を占める電気エネルギーは、その発電から配電、変換そして消費におよぶすべての過程で高度な技術を駆使し徹底した「高効率化」が要求されています。

また、その資源の枯渇とCO2排出が問題化される石炭や石油など化石燃料に依存すること無く、無尽蔵かつクリーンなエネルギー発電として太陽光や風力、波力などの自然エネルギー発電および燃料電池を主とする新エネルギー発電など、いわゆる「再生可能エネルギー発電」が注目されています。

さらに、電力発生源で発電し負荷で消費しきれない余剰電力を一次的に蓄える「蓄電装置」の改良も進み、リチウム電池や大容量電気二重層キャパシタの実用化・普及化は目前のものとなっています。

このように電気エネルギーの「省エネ化」、「創エネ化」、「蓄エネ化」を促進し、低炭素社会の実現に貢献する機器として、半導体電力装置(パワーエレクトロニクス(パワエレ)機器)の研究と開発、およびその実応用化が活発な動きを見せています。

本研究室は、高機能なパワエレ装置のオリジナル開発と、船舶を含む輸送機器や産業用機器、自然エネルギー発電システムなどへの実用化を目指し、高効率電力制御機器・システムの研究開発に取り組んでいます。

図1に当研究室が提唱する『アドバンスト・パワーエレクトロニクス』の概念と、図2にパワエレ機器の応用事例としてエンジン/蓄電池ハイブリッド移動体における電源システムアークテクチュアをそれぞれ示しています。


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図1 アドバンスト・パワーエレクトロニクス応用分野

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図2 エンジン/電池ハイブリッド電源システムアーキテクチュア

研究概要と成果
高周波ソフトスイッチング昇圧形直流電力変換器

先に上げた太陽光発電システムの太陽電池や、ハイブリッド自動車および電気自動車搭載の蓄電池(バッテリ)は、比較的低い電圧の直流電源となります。このため、システム内の各種電気負荷へ高効率に電力を供給するためには、電力の発生源である蓄電池の電圧レベルを上げ(昇圧)、機器に流れる電流容量を押さえて、発熱などの電力ロスを低減することが要求されます。このための、電力変換装置として、トランス(変圧器)を用いない非絶縁形の高効率スイッチング(ソフトスイッチング;補足説明 参照)電力変換装置を独自に考案しました。図3に回路図面を、また図4にその試作装置の外観を表しています。図5は装置の実測動作波形であり、さらに図6は電力変換効率(電源からの入力電力に対して、どのくらいの割合で出力負荷側に取り出せるかを表す指標)示します。最高で、97.3%を達成しており、ほとんど無駄なく昇圧動作かつ電力変換を行っていることが分かります。

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図3 部分共振PWM昇圧DC-DCコンバータ回路図 図4 40[kHz]-1[kW]試作機
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図5 回路の実装動作波形
図6 実測効率特性

高周波プレナートランスフォーマーリンク高効率直流電力変換器

産業用機器や輸送機器で使用される電源装置には、電源側と負荷側で電気的絶縁が要求される場合が多く有ります。これには、変圧器を使用し、絶縁を保ちながら入力から負荷へ高効率に電力を伝送する変換器が必要です。このために有効な電力変換装置として、積層形変圧器(プレナートランスフォーマー)を適用した直流変換回路をメーカーと共同で研究・開発しました。図7にその回路構成図を、また図8に実装置の外観を示します。

この装置の特徴は、素子のスイッチング損失を低減出来る事に加えて、電力制御とともに現れる循環電力損失の発生を効果的に抑制できることです。様々な負荷条件での実験評価を繰り返し行った結果、92%以上の高い電力変換効率を確認しています。なお、本装置の実応用としては、プラズマ発生電源用高周波直流電力変換回路を想定しています。


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図7 高周波リンクZVS-PWM DC-DCコンバータ

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図8 100[kHz]-8[kW]試作機
今後の展望

CO2排出源として矢面に立つ自動車をはじめ、鉄道、船舶などの輸送機器は、今後より一層の電動化が求められます。そのため、各種電源システムの高効率化と同時に小型/軽量化が必要不可欠であり、ことからもこの高周波スイッチング電力変換技術の発達と実用化は大きく期待されているところです。

今後は、電力変換回路のみにとどまらず、回路の構成要素である電力用半導体スイッチや磁気回路、センサやデジタルコントローラなども考慮に入れた「システムインテグレーション」としてのパワエレ機器の高性能化が鍵を握ります。

また、電力周波数の有効利用の観点から、既存の周波数帯域を打ち破り、MHzオーダの高周波化(RF化)は、見過ごせない技術課題の一つです。パワエレ・電力変換装置の応用分野として、波力発電および洋上風力発電システムは日本国内では比較的研究事例が少なく、今後深堀の研究開発が必要です。加えて、クリーンでかつ安全、高い利便性を持ち、移動体蓄電池への充電装置をはじめワイヤレスで電力供給するための手段として注目を集める「非接触給電」へのパワエレ機器応用は、取り組むべき重要な研究課題と考えられています。


関連する最近の研究論文
  • 三島智和、三宅修治、中岡睦雄:「改良型ZCS-PWM昇圧DC-DCコンバータの実証評価と拡張回路トポロジー、電気学会論文誌(産業応用部門)、Vol.130, No.9, pp.1115-1116, 2010年9月
  • 三島智和、平木英治、中岡睦雄:「高周波リンク非対称ZCS-PWM制御DC-DCコンバータの実証評価と検討」、電気学会論文誌(産業応用部門) 、Vol.130, No.5, pp.605-613、2010年5月
  • T. Mishima, E. Hiraki, and M. Nakaoka, “A High Frequency-Link Bidirectional DC-DC Converter for Super Capacitor-Based Auxiliary Automotive Electric Power Systems”, Journal of Power Electronic (The Korean Institute of Power Electronics), Vol.10, No.1, pp.27-33, Jan. 2010
  • T. Mishima and M. Nakaoka, “A Novel High-Frequency Transformer-linked Soft-Switching Half-Bridge DC-DC Converter with Constant Frequency Asymmetrical PWM Scheme”, IEEE Trans. Industrial Electronics, Vol.56, No.8, pp.2961-2969, Aug. 2009.
  • 竹内悠次郎・三島智和・中岡睦雄:「アクティブ部分共振セルを用いた不連続モードソフトスイッチングPWM昇圧形DC--DCコンバータの実験評価」、電気学会半導体電力変換研究会資料 SPC-11-043、2011年1月
<補足説明>
ソフトスイッチング

パワエレ回路に不可欠なパワー半導体デバイス(IGBT、MOSFETなど)のスイッチング手法として、従来のスイッチング手法(ハードスイッチング)では、スイッチ周辺の配線インダクタンスやスイッチ自体に存在する寄生キャパシタンスの影響で、スイッチ状態の遷移時(オン状態からオフ状態:ターンオフ、オフ状態からオン状態:ターンオン)に電圧・電流が重なる期間が生じる。このためスイッチング電力損失や、電磁ノイズ発生の原因となるスイッチングノイズが発生する問題がある。これに対し、スイッチに流れる電流もしくはその両端の電圧がゼロの状態でスイッチ状態を遷移する技術のことを「ソフトスイッチング」と言う。スイッチ周辺に小容量の受動素子の付加や、回路本来の寄生パラメータを利用した共振現象により、このソフトスイッチング動作は実現できる。


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ハードスイッチング
ソフトスイッチング

(2011. 1. 18)