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研究活動

最近の研究から

地球と海をきれいに:スーパークリーン舶用ディーゼルへの道

宋   明良   准教授
Keywords: ディーゼルエンジン; 排気ガス; 燃料噴射; キャビテーション; 尿素SCR; 数値シミュレーション; 混相熱流体力学
  エネルギー流体科学研究室(Energy and Fluid Science Laboratory)では、舶用機関・海洋・エネルギー・環境問題などに関わる様々な技術開発とこれに不可欠な複雑混相熱流動現象の解明および制御技術創出などの課題に対して、学内および国内外の大学や企業と協力して取り組んでいます。具体的な研究テーマとしては、舶用ディーゼルエンジンの燃料インジェクタ内部流動が噴霧に及ぼす影響の解明とその機構を活かした新しい燃料噴射技術の創生、舶用ディーゼルエンジンの排気ガス浄化技術の開発、船舶海洋構造物周囲の気液界面を伴う混相熱流動数値シミュレーション手法の開発・高度化とその利用、マイクロバブルと衝撃波の相互干渉を利用したバラスト水処理技術の開発支援、タンカー事故に伴う原油流出拡散の数値予測技術の高度化とリスク評価方法の構築などを推し進めています。
  以下にそのいくつかを簡単にご紹介します。
舶用ディーゼルエンジンの燃料噴射制御技術
  舶用ディーゼル機関の燃費向上(二酸化炭素排出量とコストの低減)や排ガス中に含まれる黒煙などの粒子状物質(PM)の低減には、燃料噴霧の空気との混合および油滴粒径などの最適化が有効です。燃料インジェクタの微細なノズル内から超高速で液体燃料が噴射される際に、図1に示すようにノズル内でキャビテーションが生じ、これが液体噴霧挙動に大きな影響を及ぼすことが明らかにされてきました。しかし、ノズル内部流動やこれが噴霧特性を左右するメカニズムは解明されていません。私達は、様々な工夫を凝らした可視化計測用ノズル、高速度カメラ、レーザー計測装置、高度数値流体計算プログラムなどを開発・駆使し、キャビテーション流れ及びその影響の解明とその制御・利用方法の創生などに取り組んでいます。

燃料インジェクタ内キャビテーション流れ制御と燃料噴霧の最適化

図1 燃料インジェクタ内キャビテーション流れ制御と燃料噴霧の最適化
舶用ディーゼルエンジン排ガス中のNOx削減技術
  舶用ディーゼル機関から排出される汚染物質の中でも、NOx(窒素酸化物)の大幅な排出削減技術の確立は世界の喫緊な課題であり、2011年には現行規制値より15〜22%のNOx排出削減が、2016年には約80%の削減が課されようとしています。これに対して、燃料噴射の最適化、排気ガス再循環(EGR)、ミラーサイクル、水添加などによる燃焼改善だけでは80%の削減は困難と考えられており、図2に示す尿素SCR(Selective Catalytic Reduction)という触媒による後処理方式が期待されています。本研究室では、舶用ディーゼル機関用の尿素SCR技術の確立を目指し、触媒の水力等価直径や排ガス流速の最適化および尿素水の噴射分散などの熱流体力学的要素技術に関する課題に取り組んでいます。

NOx削減技術として期待される尿素SCRシステムの基本構成

図2 NOx削減技術として期待される尿素SCRシステムの基本構成
自由表面や気液界面を伴う混相流体現象の数値計算技術
  燃料インジェクタ内のキャビテーション、ディーゼル機関の燃焼室内燃料噴霧、海水中に投入した微細なマイクロバブルの挙動、船舶や海洋構造物周囲の気液界面を伴う気液二相流動などは非常に複雑で、且つ精度の高い実験計測が容易ではないことがしばしばあります。しかし、これらの詳細な把握や予測は、これを内含する機器や装置の最適設計などに不可欠です。私達は、図3に示すような気液界面や自由表面を伴う複雑混相熱流動を高精度に数値予測する数値シミュレーション手法を開発・高度化し、幅広い分野の工業設計に貢献してきました。現在でも、計算手法の更なる高度化、新しい計算モデルや機能の開発、数値計算を援用した船舶海洋関連の設計評価などに取り組んでいます。

気液界面を伴う複雑混相熱流動の数値シミュレーション

図3 気液界面を伴う複雑混相熱流動の数値シミュレーション
最近の投稿論文と学会発表:
  • Akira Sou, et al., "Ligament Formation Induced by Cavitation in a Cylindrical Nozzle", Journal of Fluid Science and Technology, Vol. 3, No. 5, (2008) pp. 633-644.
  • Akira Sou, et al., "Effects of Nozzle Geometry on Cavitation in Nozzles of Pressure Atomizers", Journal of Fluid Science and Technology, Vol. 3, No. 5, (2008) pp. 622-632.
  • Akira Sou, et al., "Effects of Cavitation in a Nozzle on Liquid Jet Atomization", International Journal of Heat and Mass Transfer, Vol. 50, Iss. 17-18, (2007) pp. 3575-3582.
  • Akira Sou, et al., "Cavitation in a Two-Dimensional Nozzle and Liquid Jet Atomization (LDV Measurement of Liquid Velocity in a Nozzle)", JSME International Journal, Ser. B, Vol. 49, No. 4, (2006) pp. 1253-1259.
  • Akira Sou, et al., "Numerical Simulation of Liquid Jet Deformation Based on Hybrid Combination of Interface Tracking and Bubble Tracking Methods", Multiphase Science and Technology, Vol. 17, Nos. 1-2 (2005) pp. 23-41.
  • 宋   明良ら, "界面を含む流れの体積追跡法(界面再構築法の改良)", 日本機械学会論文集(B編), 70-698, (2004) pp.2538-2544.
(2009.10.15)